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そのちびっ子は、驚いた様子でそのチーズを凝視していた。
なんでこんなところにチーズがいるのか。
どうして畳の隙間にチーズがいるのか。
あれはホントにチーズなのか。
色んな思いが交差しすぎて、少し混乱した様子にも見えた。
数秒後、状況が把握できたのか、目の前の畳に紙のチーズがいるという状況が、やっと理解できたようだった。
そのちびっ子、チーズを真正面から見える位置にいるのではなく、真横よりやや後ろにいた。
なので、ちゃんと見えていない。
どうしても、真正面から見たいのかパパさんの抱かれていた腕の中からのっそりと抜け出してきた。
そして斜め45度くらいの位置に陣取り、チーズだと確認した。
その瞬間、一度パパさんの元に足早に戻っていった。
いや、足早と言っても膝をついた状態だったので「膝早」と言った方が正確かもしれない。
パパさんの元へ戻ったちびっ子は、もう一度チーズを見た。
と同時に、ニッコリの笑顔になった。
ようやく、完全に状況が把握できたのであろう。
薄っぺらい紙のチーズが、畳の隙間に鎮座している。
よっぽど可笑しかったのか、今度はケラケラ笑い始めた。
パパさんの胸に”顔を埋める → チーズを見る”をしばらく繰り返していた。
そして、このチーズは誰かがそこに仕掛けたのだろう、つまり人為的に成されたものだと子供ながらに気付く。
で、誰がやったのかとキョロキョロと周りを見渡す。
と言っても、キョロキョロの「キョロッ」くらいで俺と目が合う。
やっぱりな。
「絶対オマエだろう😆」と言わんばかりの表情で俺を見ている。
俺もとっさに
「そうだ😠」
と、言わんばかりの面持ちでちびっ子を見返す。
それと同時に俺は、パパさんの視線もこっちに向いているのを感じ取っていた。
けれど、俺はその視線をガン無視。
そら、そうだろう。
いい大人が、切り抜いたチーズを畳の隙間に挟む行為は、到底信じがたい。
しかも、神や仏を祀る寺院でだ。
いい大人がやる行為ではない。
そ、そりゃわかってるよ…。
けど、お前んとこのガキが泣きわめいているからよ…仕方なくやったんだ…。
そんな俺の気持ちとは裏腹に、チーズはそれでも全国のちびっ子に笑顔を振りまいている。
明日、天罰が下るかもしれん。
改宗するしかないかも…。
そういえば、岡山駅の連絡通路で聖書配ってたな…。
≪完≫
◆
寺院のレジスターもハイテク化されてる。
かと思えば、懐かしい箇所も。
なんか、エエな。